|
下半身の羽毛が揃わなくなって半年...新陳代謝が異常に落ちてきたのか、それとも栄養吸収率が悪くなってきたのか、どうも体の調子が変だ。去年までは文鳥用の保温なんて、11月になって寒風が吹きすさぶまではしなかったものだが、今年はりんだも相当気になったようでヒーターをつけることを決意したようだ。
なぜ「決意」なのか。それはいろいろなことが簡単にはいかないからだ。まず「鳥カゴ」。もう6年くらい白く丸い飾りカゴを使っていた。狭くて不便なものだったが、足のおぼつかないオレでも、長年慣れ親しんだことによって歩き慣れていたのだ。ここで新しい鳥カゴにしてもいいのだろうか...りんだはずいぶん前から悩んでいたようだ。新しいカゴには慣れるかどうかの不安がある、しかしこれ以上オレの身体が動かなくなった場合、この飾りカゴは不便すぎて使えないのだ。
しかしそんな迷いもヒーターの出現で一瞬にして消えた。飾りカゴにはヒーターをつけるスペースが無いのだ。いや、あるにはあるのだが、器用に歩くことができないオレの動きを阻んでしまうのだ。
--------------------------------------------
そういうわけでオレの環境は突然変わってしまうことになった。新しい鳥カゴに、初めて経験するペットヒーター。若鳥ならばなれるのも早いが、ここまで年をとるとこだわりも人一倍強いし新しい物には馴染みにくくなる。それは人間もおなじだからみんなも想像はつくだろう。
--------------------------------------------
10月13日
午後、鳥カゴを変えペットヒーターをつけられた。ペットキャリーなんかに入ることも好きなオレなので、知らない鳥カゴに入ることは特にイヤではなかった(でもずっとこの鳥カゴになるんだとは思わなかった。掃除かなんかをするために一時的にいれられたんだと思っていた)。ところが鳥カゴの隅にはオレよりでかい変な物体が鎮座しているではないか! なんだこれはーーーーっ!! 大好きなみかんちゃんと同じ色だが食えそうでもないし、中にはまた透明で堅そうな異様な物体が入っている。使用目的がまったくわからない正体不明の存在だ。みんな知ってるか、生き物が一番怖いものは「正体不明の存在」だ。これは長く生きて知識を吸収している者ほど怖いのだ。まったくこんなジジイなおれになんてことしやがるんだっ。ううう...しかたない。様子を見るために止まり木の反対側にいることにした。というか硬直してしまいそこから動けなくなったと言ったほうが正しいであろう。りんだはそんなオレを心配してか、ずっと鳥カゴの横にいてくれた。オレはその場で餌を食べ、水を飲み、ほとんど場所を動くことなく1日を過ごした。
夜になってみかん色の物体は中の線が光ることがわかった。まぶしくはない、やったぞ! この物体についてひとつ知ることができたぞ。
10月14日
朝になった。気が付くととまり木の真ん中にいた。オレはなんだかみかん色の物体に魅力を感じているらしい。ゆめうつつに近づいていったようである。おひさまの香りのするみかんちゃんと同じ魅力を感じるのだ。あたたかい、安らぐ、落ち着く...。意識的にちょっと寄ってみた。やっぱりあったかい。またひとつわかったぞ。みかん色の物体はおひさまのように暖かいものなのだ。まだ恐怖心ぬぐえないが時々そばに行くようにした。突然動き出したりしないこともわかった。夜にはあまり恐怖を抱かなくなってきた。
10月15日
朝起きるとりんだがオレをつかんでほおずりをしながら言った。「ラーミアちゃん、こっち半分あったかいね〜」オレはみかん色の物体のすぐ前にいたのだ。なんとあれだけ怖かったみかん色の物体と添い寝してしまったのだ。目覚めは気持ちよいものだった。気に入った。キミに名前をつけよう。「みかん2号ちゃん」だ。ジジイくさいか? いや、そこは男のロマンということでひとつ許してくれ。
みかん2号ちゃんに歌もうたってあげよう。
|